2014年10月31日金曜日

【未規制物質による室内空気汚染】

東京都健康安全研究センターは新築住宅25居室の、化学物質69種類の空気中濃度を測定したことがあります。その結果、厚生労働省の設定した13物質の暫定目標値400μg/㎥と比較したところ、13物質のホルムアルデヒドを含む数種類で指針値を超え、指針値のない未規制物質では、α-ピネン、リモネン、メチルシクロヘキセン、トリメチルベンゼン、テキサノール等15物質が単独で400μg/㎥を超え、未規制物質が高濃度になる傾向にあるとしています。

同センターからは<室内環境関連>に関する情報が公表されています。その一つに【未規制物質による室内空気汚染の現状】として、日本臨床環境医学会の会長賞受賞論文が発表されています。(*出展:臨床環境医学(第21巻第1号))

冒頭の要約の中で次のように述べています。
「1990年代に顕在化したシックハウス症候群は大きな社会問題となり、その対策として、厚生労働省はトルエン・ホルムアルデヒド等13の物質について室内の濃度の指針値を設けた。その結果指針値設定物質の室内濃度は低下した。近年使用されている建材には、シックハウス症候群に配慮した健康住宅対応型の製品が多いが、これは13物質を含まないことを意味している場合が多い。しかし、健康住宅対応型であっても、代替えとして未規制物質を含んでいることが多く、そうした未規制物質によってシックハウス症候群が起きているのが現状である。
建材に多用されるようになった未規制物質の例としては、メチルシクロヘキサン、トリメチルベンゼン、アセトン等があげられるが、その他、従来になかった多種多様な未規制物質が近年の建材に使用されている。従って、シックハウス症候群の発生を防ぐには、13物質だけでなく、未規制物質総量の把握と、その低減化に向けた対策が必要と考える」としています。

また、未規制物質で高濃度を示した物質はテルペン系も多く、近年のシックハウス対策として用いられる自然素材の影響も大きいと考えられています。接着剤や有機溶剤を用いるに内装材の代わりに、ヒノキや松等の無垢材や天然塗料等から放散される物質もあり、「規制溶剤の代替」及び「自然建材の多用」もその原因の一つとも考えられ、その使い方にも注意が必要です。

APEC(アジア太平洋経済協力機構)環境技術交流バーチャルセンターは「地球を救おう。未来を救おう」のなかで、特集<子どもの健康と室内空気汚染対策>を組み、やはり“未規制物質による影響”について取り上げています。「最近は代替製品の使用に伴う未規制物質の濃度の増加が報告されており、その健康影響が気がかりである」としています。

国はまだ13物質以外の「未規制物質」への対応を明らかににしてはいませんが、早急な方策が望まれます。また、建材等は使用前に化学物質を放散させる手立てや、使用建材の決定に際しては、その建材(天然素材を含む)に含まれる物質の確認などにも目を向ける事が大切です。


2014年10月30日木曜日

【環境省・VOC環境濃度調査について】

環境省から毎年度行われている「VOC環境濃度調査」の実施内容について公表されています。この調査の目的は<大気汚染防止法>に基づくVOCは排出抑制対策の効果を確認するために行われ、全国56地点で、24時間サンプリングを年4回(春・夏・秋・冬)し、対象物質はH24年度は19物質(トルエン・キシレン・酢酸エチル・デカン・アセトンなど)で、H25年度は58物質が対象となっています。

調査結果が公表されているのはH22年度の内容です。
【VOC排出量の推移】では、国内の固定蒸発発生源からの排出量は平成12年度に比べると44%減少しており、「着実に削減している」としています。
H12年度:142万トン⇒H17年度:111万トン⇒H22年度:79万トン
*国内の移動発生源からの排出量はH17年度:49万トン⇒H22年度:35万トン

【VOC環境濃度の推移】では、H17年度 0.091ppmCがH22年度には0052ppmCと 
 43%減となっており、「VOC排出量だけでなく、実際の環境中のVOC濃度も確実に減少していることが確認できた」としています。

*「ppmC(炭素換算濃度)」とは排出基準値で使われる単位です。通常使われる「ppm」は容量濃度です。単一成分の場合にはppmに炭素数を乗じたものが「ppmC」となります。例えばトルエン(炭素数7)1ppmは、7 ppmCと換算されます。

この調査報告を見る限り、国のVOC排出量は確実に削減され、濃度も減少しており国の大気汚染対策は一定の効果をあげているようです。

ここ数年越境汚染として「PM2.5問題」が大きくなってきました。PM2.5は非常に多くの化学物質が含有されています。調査対象の物質も含まれており、全体の濃度にどのような影響があるか否か新しい発表が待たれます。


2014年10月23日木曜日

平成25年度学校保健統計調査のポイント  「ぜん息」は6歳児がピーク 4.39%

文部科学省は平成263月「平成25年度学校保健統計調査結果」を公表しました。この調査は<学校における幼児、児童及び生徒(以下「児童等」という)の発育及び健康の状態を明らかにすることです。また、昭和42年から継続調査の「ぜん息」についても公表されています。

調査対象は満5歳から17歳までの児童等の一部で約400万人が対象です。
今回調査のポイントは

1.   身長の平均値の推移では平成6年度~13年度あたりをピークに、その後は横ばい傾向。
昭和23年当時と比較すると8歳時男子は117.4cm128.2cm10.8cmの伸び、同じく17歳男では10.1cmの伸びで170.7cmとなっています。

2.   体重の平均値の推移では、平成10年度~18年度あたりをピークに、その後減少傾向。
昭和23年当時と比較すると8歳時男子は22.0kg27.1kg7.1kgの増加、同じく17歳男では11.1kgの増加で62.8kgとなっています。

3.   年間発育量の世代間比較(身長・体重)
男子・女子ともに身長、体重のいずれも、現代に近い世代ほど早期に増加。
身長・体重(男子)の場合、昭和15年度生まれの年間発育量のピークは14-15歳、昭和40年生まれではピークは12-13歳に、平成7年度生まれでは11-12歳となっており早期の増加傾向となっています。

.「ぜん息」
  平成25年度の「ぜん息」の者の割合は、前年度と比すると、中学校では増加し過去最高となっているが、幼稚園、小学校及び高等学校では減少。

昭和42年度より調査していますが、平成25年度の各学校段階では、幼稚園が2.13%(昭和42年度は0.29%)、小学校が4.15%(同0.25%)、中学校が3.22%(同0.08%)、高等学校が1.90%(0.03%)となっております。昭和42年度よりの47年間で各学校段階で数十倍にと飛躍的に増えています。これは大気汚染や室内空気質に大きな原因があると思われます。平成15年のF☆☆☆☆規制以後も平成22年度まで右肩上がりの増加傾向でしたが、幼稚園及び小学校では2年連続、高等学校では3年連続減少の傾向がでています。

年齢別では6歳から14歳の各年齢で3%を超えており、6歳が4.39%と最も高くなっています。6歳以降は年齢が進むにつれて減少しています。

ぜん息は空気の通り道である気道が常に炎症を起こしている病気です。この気道の炎症がアレルギー反応によっておこるものを「アトピー型(アレルギー性)」、それとは違う仕組みでおきるものを「非アトピー型(非アレルギー性)」とよんでいます。
こどものぜん息の約90%、おとなのぜん息の約60%がアトピー型ぜん息といわれ、ぜん息にはアレルギー反応が大きくかかわっていると言えます。

アレルギーには体内や皮膚に触れる空気質が大きく影響しています。まだ免疫力が低いこどもには、良質な空気環境が必要です。住宅の空気質を測定し、化学物質の濃度を知ることや、化学物質が検出されたら減衰方法を講じるなど、こどもを取り巻く空気環境を改善しましょう。



2014年10月18日土曜日

柔軟仕上げ剤のにおい(2)

そもそも洗濯の主役は洗剤で、柔軟剤はサポーター役でしたが、柔軟剤の香りを優先する事が主流となり、「いい匂い」を使う事が女性でも、男性でも増えています。

柔軟仕上げ剤の国内の製造業者の販売量は2008年の24.8万トンから2012年の26.0万トンへ、販売金額は2008年の618億円から2012年の715億円といずれも増加傾向にあります。また、直近の<日本石鹸洗剤工業会>の発表では2014年1~6月の統計では、「柔軟仕上げ剤」は14.7万トン、421億円と前年同期比でそれぞれ117%、116%と増加しています。

業界団体の<日本石鹸洗剤工業会>では表示の自主基準を設け、更に洗濯実態調査(5年毎)を行っています。洗濯時に毎回柔軟仕上げ剤を使う人は増えており2010年調査では6割を超えたとの事です。

国民生活センターでは、日本石鹸洗剤工業会に対し【においが与える周囲への影響について配慮を促す取り組みを行うよう要望】し、その内容を201399日に公表をしました。

同工業会では201310月に、HPに<製品の香りについての情報や、周囲への配慮を促す啓発活動や、柔軟仕上剤の適量使用の啓発や使いすぎによる問題点の指摘>などの広報記事を再掲しました。

更に201410月には、改めて広報誌に「周囲の方に配慮した適正な使用」の記事を掲載したこと、また、特に「香り」を訴求した製品を扱う4社に対し、各社で香りの強さの目安や、周囲の方への配慮、適正使用を促す啓発活動や、テレビCMなどでも同様な啓発活動を求めたとの事です。

「におい」、「香り」の感じ方は個人差があり、一概に規制することは極めて難しいことです。しかし、製造過程で何らかの化学物質が使われているとするなら、空気質や人体への影響は懸念されるとことです。先ずは使用者が適正量を守る事です、ある調査では「目安量より多め」と答えた人は約30%で、中には標準使用量の2倍以上使っている人もいます。


自分にとっては「良い香り・におい」でも、時と場合によっては人に苦痛を与えている事も考え、適正量での使用か、初めから使用しないことに踏み切る事も大切な事と考えます。


2014年10月17日金曜日

柔軟仕上げ剤のにおい(1)

柔軟仕上げ剤の売れ行き増加と共に、「におい」による苦情・クレームも急増しています。
2008年春、花王、P&G、ライオンオン大手3社から香り系柔軟剤が相次いで発売され、市場は大きく成長しました。それにつれ「におい」を元とする問題がクローズアップされています。

今年の127日のブログ(ReN通信)で、名古屋の大西ハウジング・大西社長からのお話しとして【幼稚園での「香料自粛」の動き】を紹介致しました。
この内容は、大西様が多くの子どもが通う幼稚園で、それぞれの家庭から持ち込む様ざま「香り」が原因となるアトピー・ぜんそく・アレルギーを防ぐため、[香料自粛のお願い]を、CSあいちReの会の協力で作成し、保護者の方々に配布し協力を呼び掛けたお話しでした。

国民生活センターでは2013919日、「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」として、PIO-NET(パイオネット:全国消費者生活情報ネットワーク・システム)に寄せられる「柔軟仕上げ剤のにおい」に関する相談が増加傾向にあり、収集した相談内容を分析し、公表しました。

相談の概要は、PIO-NETに寄せられた「柔軟仕上げ剤のにおい」に関する相談件数は、最近急増しており、相談187件のうち危害情報(商品等に関し、身体にけが、病気等の疾病を受けた)は61%(115件)で急増、内訳では被害者の性別・年代は30歳台~50歳台の女性が70%、被害にあった場所は「家庭」が92%を占めています。

相談の内容は、本人が柔軟仕上げ剤を使用したところ“においで気持ち悪く、体調不良になる”、“せきが止まらなくなり、医師に複数の薬を処方された”という事など。
また、多くのケースは隣家など他人が使用した場合の相談で、“近隣からのにおいで悩まされる”、“隣人の洗濯物のにおいがきつ過ぎて頭痛や吐き気がある”、頭痛や気分が悪くなる化学物質過敏症に苦しむ人がいる事を知ってほしい“というものです。

柔軟仕上げ剤のにおい成分について、国民生活センターでは商品テストを実施しましたが、製品の元となる香料成分は、数千種類あるといわれ、殆どの成分は同定できなかったとの事ですが、いくつかの成分は香料原料や香料の溶剤等として使われる化学物質として推定されたとの事です。


さらに、柔軟仕上げ剤を使用した洗濯物を干した際の室内空気質の状態をみるため、室内空気中の総揮発性有機化合物(TVOC:トータルVOC)を調べたところ、柔軟仕上げ剤を使用しない場合と微香タイプの柔軟仕上げ剤を使用した場合では、それぞれ約20μg/㎥の上昇だが、強い芳香のある柔軟仕上げ剤を使用した場合では約70140μg/㎥上したとの事です。


続きは明日をお楽しみに


2014年10月16日木曜日

指針値とは(2)

先ずは指針値を超えないように「作る」「管理する」事が重要です。

改正建築基準法では「ホルムアルデヒド」と「クロルピリポス」が規制対象となり、クロルピリポス」は居室を有する建築物には使用禁止となり、現在では使われておりません。

ホルムアルデヒドは建築基準法により、居室に関わる建材、接着剤、壁紙などに厳しい規制が設けられています。規格の「F☆☆☆☆」はホルムアルデヒド放散等級別に性能登録と性能表示を義務付け、無表示のものは使用禁止となりました。

F☆(第1種)は使用禁止に、F☆☆~☆☆☆(第2種~3種)は使用面積が制限され、F☆☆☆☆(第4種)は制限なしに使えます。
しかし、F☆☆☆☆製品もホルムアルデヒドは微量とはいえ発散(放散)されています。使用面積が大きくなれば、発散量は蓄積されていき室内全体ではそれなりの量となります。

また化学物質は建築材料だけにとどまらす、家具・家電・紙類など室内にあるもののほとんどから発散しています。化学物質の減衰にもっと目を向ける必要があります。
また化学物質は夜間など換気がされない場合濃度が高くなる事があり、また、人がいる時間帯に換気が不足すると、部屋にいる人は室内空気中で高い濃度になった化学物質を吸うことになります。


化学物質の発散量の減衰には手軽な方法として「換気」があります。最近の住宅では24時間換気が義務付けられています。しかし24時間換気の設備がない建物も多数あります、部屋を利用する時間帯は積極的に窓開け換気をすることで、化学物質の濃度の減衰を行い、指針値以下の環境を保ちましょう。


2014年10月15日水曜日

指針値とは(1)

良く建築の化学物質に関して「指針値」と言う言葉が出てきます。代表的な化学物質ホルムアルデヒドは「0.08ppm以下」と表現されています。

何気なく使っている「指針値」とは何でしょうか。
指針値は、【現時点で入手可能な毒性に係る科学的見地から、ヒトがその濃度の空気を一生涯摂取しても、健康影響を受けないであろうと判断される数値】とされています。これは厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」で審議されその数値が決められました。

その指針値もホルムアルデヒドは短期影響(30分間)で、鼻やノドへの刺激を考慮した数値が、またトルエンやパラジクロロベンゼンなどその他の化学物質は長期影響(数年またはそれ以上)を考慮した極めて安全側に立った数値が示されています。

東京都は指針値が示した物質と体調不良との『明確』な対応は証明されておらず、また、指針値は、シックハウス症候群を引き起こす閾値(境界となる値)ではないとしています。


指針値はこれまで次の13の化学物質に定められています。


続きは明日をお楽しみに。







2014年10月10日金曜日

【PM1.0】って?

粒子状物質PM2.5の飛来に大きな関心が集まるようになって数年が経ちますが、ここ12年あたりより【PM1.0】と言われる更に粒子が細かい物質が話題に上がるようになっています。

PM1.0】とは何でしょう。PM2.5と花粉が一緒に存在する場合、何らかの花粉にPM2.5が付着、この付着物質に水分が吸収されると花粉がもろくなります。この状態の時、高湿度いわゆる水分が加わるなどの条件で花粉が破裂、分裂してしまった花粉と一緒に【PM1.0】が誕生、非常に小さい粒子で、口や鼻の粘膜では対応しきれず人体に容易に入ってしまうと言われています。

埼玉大学の王先生はスリーエムケア㈱のサイトで(要旨)「大気汚染物質により傷がついた花粉は割れやすく、特に、湿度が高まると花粉が裂けて爆発しやすくなる。この爆発によって花粉表面と内部からアレルギーの原因となるアレルゲン物質が大量に放出される。その後晴天時に乾燥し、アレルゲン物質の大きさは、元のスギ花粉の30分の1、わずか1.0マイクロメートル以下のPM1.0となるので、さらに細かな粒子として大気中に浮遊する。粒子が小さくなるほど肺の奥、さらに血管に侵入しやすくなり、濃度上昇に従い、ぜんそく・気管支炎・肺や心臓疾患の発症リスクがさらに高まる。スギ花粉に限らずヒノキ花粉も同じ事が考えられる。花粉飛散時期には、しっかりとした花粉対策を」をと言われています。

花粉飛散時期はまだ先のことですが、中国でのPM2.5の状況は季節に関係なくあまり改善されていません。つい先日は北京で「最悪の状況」と報じられ、日本を襲う台風にのり日本各地での飛散が懸念されています。

また、冬場に向け閉鎖された状態での室内空気の改善が、より必要な時期となって参ります。PM2.5PM1.0)対応の高性能空気清浄機や、空気質改善資材を有効に活用し「きれいな空気の家」で、安全安心に暮らしましょう。