2013年8月28日水曜日

高齢者の事故(家庭内事故)

高齢者の事故は年々増えています。東京消防庁管内での高齢者の緊急搬送数は
ここ5年間ほぼ横ばいで年間5万人です。そのうち家庭内事故は60%に達します。
バリヤフリーが提唱され、新築やリフォームで積極的にバリヤフリーが取り入
れられても事故は多発しています。事故の実態を知り、建築に携わるものとし
て1件でも家庭内事故を減少することが急務です。

東京消防庁より「高齢者の事故を防ぐために」として、高齢者の事故データの
一部を分析した統計資料が発表されています。

この資料の総括として次の4点をあげています。
①高齢者(65歳以上)に事故は、平成18年から平成22年までの5年間に
    235,783人が緊急搬送され、年々増加している。
②けがは「ころぶ」が最も多く、次いで「落ちる」、「ものがつまる・もの
  が入る」となっている。また、発生件数は少ないものの「おぼれ」は中等
  症以上となっており、十分な注意が必要。
③事故の多くは住宅内で発生しており、そのほとんどが一番身近な居室・寝
  室で起こっている。
東日本大震災に起因した東京消防庁管内での緊急搬送データを分析すると、
  「ころぶ」ことによる受傷は高齢者の割合が高い。

東京都民の生活事故における緊急搬送人員は年間約11万人で、5年間ほぼ横ば
いです。65歳以上の高齢者では、年間約5万人で全体に占める割合も少しづつ
増加しています。

緊急搬送直後の初診時程度では総数235,783人のうち、約41%の8万7千人が入
院を要するような程度である中等症以上です。また、軽傷(入院の必要がない
もの)は59%・14万人でした。

けが原因では、身近な住宅等での事故が最も多く、「ころぶ」ことによる受傷
がほとんどで総数の約81%・10万3千人に達します。加齢による身体機能の変化
が影響しているようです。

季節性では冬場に特長的なのが、「おぼれる」や「ものがつまる・ものが入る」
です。浴室とご飯、餅には要注意です。

住宅等の居住施設内での事故は、圧倒的に居室・寝室が多く全体の約53%です。
床・畳や家具等につまずいて、「ころぶ」ことによる受傷が最も多くなってい
ます。また、重症度との関連を見ると、「おぼれ」が最も高くなっています。

住宅等居住施設内での事故に関連する設備・製品では、ベスト3は「家具」・
「階段」・「床・畳」で、重症度が高いのは「浴槽」・「食物」・「餅」です。

事故防止の視点として、次の5点を上げています。
事故防止の視点①・・事故の実態を知る・知らせる。
          家庭内での事故が多い!高齢者の発生率は高い!
事故防止の視点②・・身体機能について自覚する。
          加齢とともに身体機能は変化していきます。
          生活環境(特に生活動線)を定期的に点検・見直しする。
事故防止の視点③・・整理・整頓
          少しづつ計画的に実行。家族も支援を。
事故防止の視点④・・多い事故、大きな事故を防ぐ。
          「ころぶ」を防ぐために
           ・段差の解消(スロープ、ミニスロープ)
           ・十分な明るさ(足元灯、人感センサー、照明器具の
            設置)
           ・滑り止め(階段、廊下、玄関先)
          「おぼれ」を防ぐために
           ・入浴はおもいのほか身体に負担をかけるということ
            を知る。
           ・入浴時には家族は声をかけ、定期に声をかけましょ
            う。
           ・長湯、高温浴は避ける(浴室時計の設置、温度計の
            設置)
           ・飲酒後の入浴は止める。
           ・浴室や脱衣所、他の部屋との温度差を少くする(暖
            房器具設置)
          「ものがつまる・ものが入る」を防ぐために
           ・小さく切って、よく噛む。
           ・お茶など水分をとりながら食事をする。
           ・食事中に急に上を向いたり、食べ物を口に入れたま
            ま喋らない。
          「緊急時」のための一例 
           ・緊急用ブザー・センサーの設置、非常時のための警
            笛を配置。
事故防止の視点⑤・・家族・隣近所での声かけ
          高齢者は体調が毎日変わり易くなってきています。高齢
          者とのおつき合いを密にし、万が一の時の早い対応、態
          勢つくりを。

とし、家族共々の事故防止を呼び掛けています。

高齢者人口は増加の一途です、家庭内事故での、事故死亡者を年代別に見ると、
65~70歳約34%、80歳以上が45%と65歳以上が79%に達します

中でも事故数の多い「ころぶ・つまずく」への一層の対策が必要です。また高
齢者の身体機能維持のため、全ての床がバリアフリー(レベル±0)は、代えっ
て<足を上げる>機能を阻害し足腰を弱めるとの指摘もあります。

また、浴室内事故では転倒が48.2%、溺水が17.4%と高齢者の事故防止のため、
手すり等の設置は極めて有効の手段とされています。居住者(高齢者)の身体
機能レベルに合わせた、建築的な対応が求められます。

ReN空間創造プロジェクト

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