2014年12月18日木曜日

東日本大震災 津波経験の子どもにアトピーなど高い発症率

東北大学の東北メディカル・メガバンク機構(仙台市)では1217日、宮城県内の小中学生を対象に行った健康調査で、東日本大震災で津波を経験した子供や、居住環境が変化した子供は、アトピー性皮膚炎や心の問題を抱える割合が比較的高いとする調査結果を発表しました。

調査対象は、県内25市町村の公立小中学校等の児童生徒21千人弱にアンケートを配布し、保護者が記入し6,500人弱から回答がありました。

調査では、アトピー性皮膚炎を発症していたのは、津波経験のない子供が20.5%に対し、経験のある子供が24.5%。
震災後の居住環境に変化がない子供が20.4%に対し、変化のあった子供は23.1%。
いづれも大震災を経験した子供の発症率が高くなっています。

子どもの精神衛生状態を調べる指標「SDQ」を用いた調査の結果、「支援必要性が高い」とされる16点以上だった子供は、津波経験のない子供が14.8%、経験のある子供が18.4%。居住環境に変化のない子供が14.2%、変化した子供が18.7%でした。
ともに経験のある子、環境の変化があった子供が多くなっています。

同機構の菊谷準教授(疫学)は震災を経験した子供に発症が多いことについて「仮設住宅などに移住して入浴回数が少なくなるなど生活の変化があったり、震災のストレスで症状が悪化したりしたのでは」と分析。SDQの高さについては「震災から3年がたってもまだ子供たちの心に影響が残っていると言える」としています。    (出展:産経新聞)

同機構ではH24年度より宮城県内の小中学生の保護者を対象に「地域子ども長期健康調査」を実施しています。
25年度調査の<こころの健康>についての中で、「居住環境の変化があった子供で、生活の中で心配な行動などの何らかの難しさを抱えていると思われる」子どもは小・中学生で18.9%に上り、毎日の生活で物理的・心理的な生活環境の変化が、大きなストレスになっているようです。

来年3月には被災から満4年が過ぎようとしています。復興住宅の建設も計画の遅れが声高に言われていますが、全体の風潮では記憶そのものがだんだん薄くなりつつあるようです。

一日も早く被災した子どもたちの<こころの健康>が、明るいものになる日が望まれます。


2014年12月10日水曜日

乳幼児突然死症候群(SIDS)・たばこ

乳幼児突然死症候群(SIDS)は、それまで元気だった乳幼児が、事故や窒息でなく眠っている間に突然死亡してしまう病気です。厚労省によれば、日本での発症頻度は出生6,000人~7,000人に1人と推定され、生後2か月から6か月に多いとされています。H23年には全国で148人の赤ちゃんがこの病気で亡くなっています。

SIDSの原因はまだわかっていませんが、男児、早産児、低出生体重児、冬季、早朝から午前中に多いことや、うつぶせ寝や両親の喫煙、人工栄養児で多いことが、H9年度の厚労省「乳幼児死亡の防止に関する研究」で分かっています。

同研究では育児習慣等に留意することで、SIDSの発症リスクの低減が期待されるとしています。主な注意点は次のようです。
・うつ伏せ寝は避ける。
 ・たばこはやめる。
 ・できるだけ母乳で育てましょう。

H9年の調査では、SIDS児はうつ伏せ寝、母乳栄養でない児、両親の喫煙により3.004.83倍多く発生されると結論されています。

たばこについては「たばこはSIDS発生の大きな要因」とし、H9年度研究では、両親が喫煙しない場合の約4.7SIDSの発症率が高いと報告されています。

ある研究では、父、母共に喫煙している場合、両親若しくは母親が喫煙していない場合より、SIDSを引き起こす確率は47倍に増えるとされています。
さらに、母親の一日あたりのたばこの本数が増えるほど危険率は上昇、1日当り20本を超える場合、19本未満の時よりも1.4倍に、両親が喫煙し20本以上の場合、両親とも喫煙していない場合より7倍以上に危険度が上昇しているとされています。

また、妊娠中の喫煙は胎児の体重が増えにくくなり、呼吸中枢にも良くない影響を及ぼすとの事です。また他人の副流煙でも同じような事が懸念されます。

たばこを吸うと、母体の血管が収縮し血流が悪くなり、血液中の酸素が不足し胎盤機能が低下、胎児への栄養や酸素が不足してしまいます。妊娠中にずっと喫煙していた場合、タバコを吸わなかった人に比べて低体重児の発生率は約2.5倍、早産の発生率は約3.3倍になるとも言われています。妊娠中の喫煙の禁止や、副流煙を受けやすい場所へ近寄らないなど、胎児への影響を最小限にとどめましょう。


2014年12月9日火曜日

平成25年「低層住宅の労働災害発生報告」

(一社)住宅生産団体連合会は、会員企業に対し休業4日以上の労働災害発生
状況についてアンケート調査し、平成25年1月~12月の調査結果を公表し
ています。

平成25年の調査概要は、対象企業数598社、完工棟数(新築)17万余棟、リ
フォーム37万棟、解体工事1.9万棟、労働災害発生件数492件です。

労働災害事故は増改築工事では減少したが、新築工事と解体工事では大幅に増
加しており、安全教育の徹底が必要としています。

H25年も建方、内部造作工事における災害発生比率が高いのは前年と同様の
傾向。建て方時の労働災害は全労働災害数の28.7%と約3割近く、次いで内部
造作時が16.7%となっており、建方作業時は安全帯の使用は勿論のこと、墜転
落防護ネットの設置や開口部転落防止措置等の安全設備の充実を図り、適正な
工期の確保や現場入場者に対しては、災害発生防止教育の充実と共に現場で「
不安全行動をしない・させない」の普及啓発が重要であるとしています。

職種別では「大工」の労働災害は全労働災害数の52.8%と半数に達し、次いで
「トビ足場」が10.2%と例年と同様の傾向です。また、「一人親方」の割合が
2年連続で増加し、平成17以降最も高い割合です。「一人親方」等に対し、
万が一の災害補償対策として「労災保険の特別加入制度」等への加入促進が重
要です。

年齢別では平成25年は、平成23年に減少した50歳代及び60歳以上の災
害発生割合が平成24年に引き続き増加し、40歳台についても増加し、40
歳以上で63.4%をしめ、今後も低層住宅に携わる作業者の高齢年化が進むと予
想され、40歳台以上の災害発生比率の増加が懸念されています。

高齢者による労働災害の防止については、高齢者自身の運動能力の低下ならび
に、反射神経の低下を自覚させることが大切で、また、事業主や管理者は高齢
作業者が運動能力を把握するための教育訓練の実施、運動能力低下を意識して
作業を行う事への意識付や高齢作業者の健康状態の把握、高所作業への配慮な
どが必要であると注意を促しております。

平成25年労働災害の大きな要因としては、消費税増税の影響による工事量の
増加、コスト競争による安全対策費の削減、経験豊かで安全知識豊富な高齢作
業者の引退・廃業等での減少、それによる危険感受性・プロ意識の低下等が考
えられると指摘しています。工法別の災害件数のトップが<木造在来軸組>の
183件・37.1%と約4割近くが、在来工法でおきています。

報告にある建て方時、内部造作時の墜転落や工具での事故が多いと思われ、「
墜転落防止」・「工具災害防止」等の教育を徹底し、安全経費(足場等の直接
工事に絡まない経費)につい地域工務店・ビルダーでどこまで年間予算として
計上し、安全対策に時間と費用を掛ける事が、事故防止の観点から重要な事と
思われます。


2014年12月8日月曜日

電子タバコ関連事故が急増

アメリカでは「電子たばこ関連」の事故が急増しているそうです。

電子たばこの詰め替え用の液体ニコチンをめぐる事故が急増し、その大半が子どもに被害がでていると報じられています。

米疾病対策センター(CDC)では、液体ニコチン詰め替えボトルに関する通報は20109月には1件しかなかったが、20142月には214件あったとしています。

調査対象の4年間で、たばこ関連の通報は16.284件あったが、うち電子たばこ関連は2,405件で、その大半は子どもの誤飲事故と報じています。

電子たばこ関連の通報の51%は、5歳未満の幼児で、液体ニコチンを誤飲した、吸い込んだ、皮膚にこぼした、目に入ったなどの事故で、最も多い症状は嘔吐や吐き気、目の炎症です。
CDCの所長は「電子たばこに関する新たな危険信号だ、液体ニコチンが危険物になり得ることを示す報告」と語っています。

また、電子たばこ用の液体ニコチンには、キャンデーやフルーツなど子どもの興味をそそりやすい風味(フレバー)が付けらているにもかかわらず、容器には子どもの安全への配慮が義務付けされていない点が特に危険としています。

電子たばこ用の液体ニコチンは通常、小さな容器(ボトル)に入れて販売されており、有識者は液体ニコチンの保管場所には「排水管用洗剤や高齢者の高血圧治療薬」と同じ程度の配慮が必要としています。


アメリカに限らず日本でも電子たばこの愛用者は急増しています。厚労省からも家庭用品での、子どもの誤飲、特にたばこの誤飲については34年間たばこが第1位の報告もあります。関連物の置き場には特段の注意をはらいたいものです。


2014年12月5日金曜日

家庭用品による健康被害 幼児のタバコ誤飲34年連続で最多!

厚生労働省は「H24年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」を公表しています。
モニター病院(皮膚科・小児科)から毎年報告されているもので、H24年度で報告された事例報告は1.576件(前年度1.491件)です。

今回の報告のポイントは次の3点です。
・皮膚障害は、装飾品(金属製)が29件と最も多く報告された。
・小児の誤飲事故は、タバコが99件と34年連続で最も多く報告された。
・吸入事故等は、殺虫剤が296件、洗浄剤(住宅用・家具用)が175件報告された。

「皮膚障害に関する報告」の件数は90件(前年度119件)で、最も多く報告された家庭用品の種類は「装飾品」で件数は90件です。性別では女性が66件と大半を占めています。また、皮膚障害の種類は「アレルギー性接触皮膚炎」48件と、「刺激性接触皮膚炎」27件がほとんどを占めています。

「小児の誤飲事故に関する報告」の件数は385件(前年度348件)で、最も多く報告された家庭用品の種類は「たばこ」で99件です。誤飲した年齢は生後611ヶ月が最も多く125件、1217ヶ月が85件、1823ヶ月が52件、2歳児が41件です。このうち死亡事故はありませんでしたが、入院・転科・転院した事例は23件となっています。

報告では「事故は家族が小児に注意を払っていても発生、小児のいる家庭では、小児の手の届く範囲ではできるだけ、小児の口に入る大きさのものは置かないように注意を」と呼び掛けています。

「吸入事故等に関する報告」の件数は、1.101件(前年度1.024件)で、最も多く報告された家庭用品の種類は「殺虫剤(医薬品・医薬部外品を含む)で296件です。年齢別では、9歳以下の子どもが最も多く439件と4割近くを占めています。また、製品の形態では、スプレー式の製品が最も多く530件、次いで液体製品が315件です。

報告では「事故の発生状況を見ると、使用方法の・製品の特性について正確に把握していれば事故の発生は防ぐことができた事例や、わずかな注意で防ぐことができた事例も数多くあり、製品の使用前には注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることが重要」としています。


どの事故例も家庭内での家族同士のわずかな気配りで、事故を未然に防ぐことが出来ます。特に乳幼児、小児や高齢者がいる家庭では、手や口に入る位置・高さに危険が予測されるものを置かないなどの対策をとりましょう。


2014年11月29日土曜日

電子タバコは安全? (2)

(独)国民生活センターではH228月に「電子タバコの安全性を考える」を公表しています。

国外ではニコチンを含むカートリッジが販売されていますが、国内ではニコチンが医薬品成分に指定されているため、原則として、国内では流通しているタバコ以外はありません。
同センターではテスト時期に国内で販売されている25銘柄についてテストしました。

テスト結果(要旨)は次のとおりです。
     国内で販売されている25銘柄45味中、11銘柄15味でニコチンが検出された。
     国内で販売されているほぼ全ての銘柄でニコチンを含まない旨の表示が見られたが、一部の銘柄からニコチンが検出された。
     カートリッジ内の液成分表示があったのは25銘柄中11銘柄のみで、表示されているものの中でも表示内容には大きな差があった。
     使用対象年齢に関する表示があったものは25銘柄中16銘柄であった。
     多くの事業者は、未成年者は使用するべきではないと回答しながら、表示以外の対策を講じていなかった。

また、同センターでは消費者へのアドバイスとして
     電子タバコの安全性は根拠が不十分であると考えられるので、安易な使用は避ける。
     禁煙あるいは減煙の効果ははっきりしないと考えられるので、その効果を期待して継続的に使用することは避ける。
     未成年者が安易に使用しないよう保護者等が十分に注意する。
     国外ではニコチンが含まれる電子タバコが販売されているので、購入・使用・譲渡には注意する。

また、行政側に対しては電子タバコの安全性について、薬事法・景品表示法等からの調査・指導や法規制を含む安全対策を講じることを要望しています。

しかし、今日に至るまで電子タバコに対する法整備はされておらず、H266月には政府に対し「電子タバコの規制並びに分類に関する質問主意書」が出されております。

電子タバコについては、その安全性について十分に検証されていないのが実態のようです。

特に未成年者の使用には禁止を含む強い規制が必要と考えます。また、副流煙への影響も懸念されています。速やかな法整備が望まれます。



2014年11月28日金曜日

電子タバコは安全? (1)

全国的な禁煙・分煙の意識の高まりなどから、電子タバコが注目されています。禁煙を望むがタバコをなかなかやめられない人や、タバコの値上がりに悩む人などの愛用が増えています。米投資銀行ゴールドマン・サックスは昨年、今後成長が見込める8つの分野を発表しましたが電子タバコもその一つに入っています。

厚生労働省は1127日に「電子たばこ」の健康影響について、初めて本格的な議論を開始しました。この会議では、ニコチン入りの溶剤を海外から個人輸入している現状や、ニコチンが入っていない電子タバコでも、溶液を加熱して蒸気にする過程で発がん性物質が発生し、健康に悪影響を与える可能性がある事が報告されました。

会議で国立保健医療科学院の専門家が、電子タバコの種類によってはその蒸気の中に「発がん性物質のホルムアルデヒド」が紙巻タバコの煙の10倍以上含まれていると報告しました。

WHO(世界保健機構)は20089月、電子タバコの安全性や効果について疑問を呈し、また「電子タバコを使用しないよう強く勧告する」と警告を発しています。ニコチン以外の成分による健康被害が増加してるからです。

電子タバコはバッテリー、カートリッジ、カートリッジ内部の液体を加熱して霧化する部分(変霧部)で構成されています。このカートリッジに香りや味のついた液体を入れ、蒸気を吸う【ベーブ】と呼ばれるタイプの商品が、国内で若者を中心に急激に広がっています。
日本ではニコチン入りの電子タバコの販売は禁止されていますが、2010年の国民生活センターの調査では、25銘柄中11銘柄の電子タバコからニコチンが検出されました。

電子タバコは未成年者でも吸う事ができます。世界でおよそ8000種類の電子タバコが流通し、WHOは各国に対し電子タバコの未成年者への販売禁止や、公共の建物内の使用禁止などを勧告しています。


電子タバコも普通のタバコ同様に「副流煙」の被害が想定されます。厚労省は「吸っている本人だけでなく、周りの人の健康に影響を及ぼす可能性がある」としています。使用者は周囲に影響を与えていることに充分留意しましょう。



2014年11月26日水曜日

札幌市児童の喘息と自宅暖房器具の排気管等の関連について

北海道大学環境健康科学研究教育センターでは、20148月【札幌市児童の喘息と自宅の暖房器具の排気管および機械換気との関連】について発表しています。

日本や海外で過去20年間で児童喘息の有病率が増えており、様々な疫学研究によって、子どもたちをとりまく室内環境が、喘息発症の大きい要因になっていることがわかってきており、その中でも、固体燃料や生物燃料の暖房による室内空気汚染が児童喘息のリスクになること、また、暖房に排気管を使用すると、児童の喘息は減少することが報告されています。今回の研究は、小学生を対象とし、暖房の燃料・排気管の有無・機械換気の有無と喘息症状の関連を明らかにすることを目的にしたとの事です。

今回の研究は200811月~20092月にかけて、札幌市内公立小学校12校の1-6年生6.393名を対象とし、60.6%の3.874名の回答を分析しました。

喘息症状がある児童は12.8%で、喘息症状のリスクは、電気の暖房器具を使用している場合と比較して、ガスや石油などの暖房器具で排気管(煙突)はあるが機械換気のない場合には1.62倍、排気管はないが機械換気はある場合は1.77倍、排気管も機械換気もない場合は2.23倍高くなったとの事です。

また、これまでに喘息のリスクをあげることで知られているダンプネス(湿気がありじめじめした状態)の有無での調査では、ダンプネスがあってもなくても電気の暖房器具を使用している場合と比較して、排気管がない場合や換気設備のない場合には、喘息リスクをあげることがわかりました。

電気の暖房器具と比較して、ガスや石油の暖房器具を使用した場合に喘息のリスクは高く、
その理由として、燃料を燃焼させることにより放出される二酸化炭素、二酸化硫黄、及び粒子物質(PM)などが喘息症状の要因となっています。
排気管のない暖房器具を使用する場合、または、暖房を使用している時に機械換気をしないことも、児童の喘息に症状に大きな影響があるとの事です。

報告では、「北海道は冬が寒く、住宅の気密性が高いため、喘息予防のためには、電機以外の石油やガスを燃焼させる暖房を使う場合、特に排気管のない家では、十分に換気に注意が必要」と結んでいます。

北海道に限らず、東北や北陸では電気以外のガスや石油を熱源とする事は恒常的です。報告書による、児童喘息へのリスク回避のため排気管の設置や換気に充分気を付けましょう。


2014年11月25日火曜日

居室の断熱改修による睡眠・血圧などの安定化へ

東京都健康長寿医療センターでは、「冬場の住居内の温度管理と健康について」として、これからの時期心配される「ヒートショック」についての予防と対策を発表しています。

その中で「居室の断熱改修による睡眠、アレルギー症状、血圧の改善等」についての調査内容を公表しています。

同センターでは断熱改修の前後における居住環境と、高齢者の健康について調査を実施致しました。東京と埼玉で築20年以上の戸建住宅に住む高齢者(59歳~85歳)を対象に、内窓の設置のほか、壁や床への断熱材取付け、及び、床暖房の設置等の断熱改修を実施。この改修の前後で、室温や血圧の測定、健康に関連するヒアリングなど行い2011年から約1年間をかけてデータをまとめました。

1.      居室の断熱改修は、睡眠やアレルギー症状に良い影響を与える。
鼻や眼のアレルギーに関連する、くしゃみ、鼻づまり、涙目等の7項目について、アンケートを実施したところ、改修後は症状が減った。
睡眠習慣についても同様に「睡眠の質」が改善された。

2.      居室の断熱改修は、血圧の低下や安定化に効果的である可能性を示唆。
断熱改修後に、血圧の安定化を示唆する変化が見られた。
2010年実施の高齢者43人(7786歳)への調査によると、部屋全体が暖まっている「適温」での生活が、血圧の上昇を抑え、安定化に効果的である事が判明した。

3.      居室全体を暖房し室温が高いと活動量や筋力も高い
暖房方式と居室の室温、活動量には関係があり、部屋全体が暖まっている「適温」で生活している高齢者は、活動量が高いという結果に。
こたつやカーペットのみを使っている高齢者の「住宅内で歩行活動以上の活動量」の割合は030%に対し、部屋全体を暖房している高齢者の活動量は050%と、活発な事が分かる。
居室全体を暖房している高齢者の握力は、部分暖房の高齢者より高く、また、膝屈伸
力も大きい。

居室の効果的な断熱改修等について、同センターは比較的やり易い方法を紹介しています。
冬場の居室では、熱の48%が窓から逃げています。また換気を上回る熱が壁から逃げています(換気17%・外壁19%・屋根6%・床10%)。

     窓の断熱方法
・内窓等の設置や窓ガラスを単体ガラスから遮熱複層ガラスへ交換。
・ガラス面に断熱シート、断熱フィルムを貼る。
・暖房時にカーテンやブラインドを閉める、すき間テープ等で窓の隙間をふさぐ。

     床の断熱・暖房方法
・床断熱材工事を行う。
・断熱シートや厚手のカーペットを敷く。
・床暖房を行う。

     壁の断熱方法
・断熱材の設置はいろいろの方法がありますが、壁の内側に断熱パネルを取り付ける方
法は一部屋単位での設置が可能で、比較的手軽な工事で設置できます。
報告書では「これからの寒い季節に備え、簡単な施工で、コスト負担も少ない断熱改修や、こたつやホットカーペットのような局所暖房でない居室全体を暖める床暖房等を取り入れることは、居住者の健康に大変重要です」としています。


公表された内容は従前から良く言われていたことですが、エビデンスを集め実証したこともまた重要な事です。高齢者にとって「暖かい」ということは何にもまして良い環境です。動く事により筋力をつけ、自分で動きまわることが、寝込まないための大切な事です。



2014年11月11日火曜日

「三次喫煙」  乳幼児への影響大!

三次喫煙という言葉をご存じですか、近頃よく耳にする言葉です。三次喫煙は残留受動喫煙(サードハンドスモーク)ともいい、ダナ・ファーバー研究所(アメリカの国立がん研究所)が作りだした新語で、2009年にその存在が認知されました。

喫煙による代表的な健康被害は、タバコを吸った本人が肺内に吸い込んだ煙の中に含まれるニコチンやタールなどの有害物質によって引き起こされる「一次喫煙」。しかし、タバコを吸う人は「フィルター」を介してタバコの煙をとり込むことがほとんどですが、周りにいる人は直接発がん性物質を含んだ煙を吸い込む事となり、リスクが高まります。
タバコを吸う人のまわりに人たちが、タバコの煙を吸い込んでしまう「二次喫煙=受動喫煙」があります。

では、三次喫煙とは何でしょうか。
タバコを消した後の残留物から有害物質を吸入することを言います。受動喫煙に比べると一般の認知は低いといわれています。有害物質を体内に取り込むとは、タバコの煙が壁や家具、カーテンに付着し、その家具などに触った時など手に付着し、発がん性物質が体内に入り込みます。

三次喫煙で問題となる有害物質の中には、発がん性物質として最も強力なものの一つである「ニトロソアミン類」が含まれています。

ダナ・ファーバー研究所は「三次喫煙の影響を一番受けるのは子どもや赤ちゃんなどの乳幼児」といっています。その理由は子どもの呼吸速度が早いこと。大人が1分間に「20回」程度といわれていますが、1~3歳の子どもは「20~40回」、0~1歳の乳児は「2060回」も呼吸をします。また、床やカーペットに接触することが多く、背丈も小さいため大人より三次喫煙のリスクや害は高くなります。

子どもは鼻や気管や肺の粘膜の感受性が高いので、煙の中の微粒子や化学物質で粘膜は傷だらけになりやすく、長期間になればぜん息などの慢性の疾患も起こると言われます。

三次喫煙のリスクは払拭することが難しいといわれています。例えば喫煙者が住んでいた賃貸物件では、喫煙者が引越してから2か月経っても三次喫煙の有害物質は残っています。
三次喫煙の有害物質は除去が難しいため、通常の掃除器具での掃除では完全には除去できません。完全に防ぐには、家具、カーペット、壁紙などすべて新しいものに取り換える事が必要と言われます。


喫煙は受動喫煙(二次喫煙)そして三次喫煙と、喫煙者以外への影響が大きく、喫煙者はその影響を考える必要があります。



2014年11月6日木曜日

木質化率と睡眠効率

「建物全体の50%程度、例えば床と天井にムク材を使用している住宅は、住
まい手が良好な睡眠を得るのに最も効果的」と、慶應大学の伊香賀教授が全国
の工務店及び住まい手の協力を得て検証しまとめられています。

建物の木質化率が低すぎても、高すぎてもだめで50%程度を木質化している
場合が最も睡眠効率が高いとの事です。ムク材の見た目と香りがもたらすリラ
ックス効果の点から、木質化と良好な睡眠の関係を検証。木の香りが強いほど、
好ましさとリラックス度が強まる事が分かりました。さらに、木質化率別に香
りを好ましいと感じる人の割合は、木質化率が高いほど好もしさが上がりまし
た。

ムク材の見た目の効果。床や壁、天井などにムク材を使用している量と、見た
目の好ましさの関係を分析したところ、壁面の係数だけがマイナス、「壁面に
おいて木の使用量が多くなると、見た目の好ましさが低下すると見られる」と
の事です。

また見た目を好ましいと思っている人の割合は、木質化率50%程度をピークに
好ましいと感じる人の割合が変化する傾向が表れ、木質化率100%の方が好まし
いと感じる人の割合が下がると言う事です。これは「室内の全面を木質化する
と、暗い印象や圧迫感が出るのでは」と伊香賀教授は説明しています。

リラックス度と睡眠効率の関係では、互いに高い方が良好で、リラックスでき
る木質化された住宅であれば【良い睡眠】が得られるとの事です。また1部屋
だけでなく「就寝するまでに過ごすリビングやダイニングなどの部屋でのリラ
ックス度も影響する。建物全体で50%程度が望ましい」と指摘しています。

いま「自然素材」・「ムク材」など木を前面に打ち出した仕様・工法が目立ち
ます。また消費者もこの言葉に惹かれ我が家でも是非にと用い、床はもとより、
壁・天井も木質仕上げで、建物に入るとある種圧倒される思いがする家もあり
ます。やはり「ほどほど」の使いみちが、一番安定し、休まる空間といえるの
でしょう。


2014年11月4日火曜日

アジア大陸から飛散 「砂のちり」でぜんそく重症化

中国医科大学第四医院を中心とした研究グループは、日本に飛散する「アジア大陸からの砂のちりによってぜん息が悪化」とした研究結果を1014日に科学誌に報告しました。。

同研究グループは、ネズミを用い、「オボアルブミン(OVA)」と呼ばれる卵の卵白に含まれる物質でアレルギーの状態を起こした場合、砂のちりに存在するタール成分がどう影響するかを検証しました。

福岡県の大気より採取した砂のちりからタール成分を抽出し、さらに、ゴビ砂漠から採取した砂のちりを加熱して無害な状態にし、タールやOVAなどで処理し、ネズミへの影響を調べました。

その結果、無害化した砂のちりとOVAだけであれば、有害性は軽かったが、タール成分が加わった場合、低濃度でも気道でぜん息の原因となる好酸球が大量にでてきて、粘液を作りだす杯細胞を増やすとわかったとの事です。
アレルギーの人はこのようなタール成分が入ったものを吸入したとき、重症化が想定されとのことです。

同じく大陸から飛散するPM2.5は、ぜん息などに悪い影響を与える事が知られてします。これからの時期、黄砂とそれに混じるPM2.5などの大気汚染物質の飛散が高くなります。


外出時PM2.5対応のマスクの着用や、帰宅した時の衣服からの払い落としなどを行うとともに、住宅での外気の取り込みなど注意が必要です。また換気を控えた場合など、室内を<きれいな空気>の環境に保つことが非常に重要となります。


2014年10月31日金曜日

【未規制物質による室内空気汚染】

東京都健康安全研究センターは新築住宅25居室の、化学物質69種類の空気中濃度を測定したことがあります。その結果、厚生労働省の設定した13物質の暫定目標値400μg/㎥と比較したところ、13物質のホルムアルデヒドを含む数種類で指針値を超え、指針値のない未規制物質では、α-ピネン、リモネン、メチルシクロヘキセン、トリメチルベンゼン、テキサノール等15物質が単独で400μg/㎥を超え、未規制物質が高濃度になる傾向にあるとしています。

同センターからは<室内環境関連>に関する情報が公表されています。その一つに【未規制物質による室内空気汚染の現状】として、日本臨床環境医学会の会長賞受賞論文が発表されています。(*出展:臨床環境医学(第21巻第1号))

冒頭の要約の中で次のように述べています。
「1990年代に顕在化したシックハウス症候群は大きな社会問題となり、その対策として、厚生労働省はトルエン・ホルムアルデヒド等13の物質について室内の濃度の指針値を設けた。その結果指針値設定物質の室内濃度は低下した。近年使用されている建材には、シックハウス症候群に配慮した健康住宅対応型の製品が多いが、これは13物質を含まないことを意味している場合が多い。しかし、健康住宅対応型であっても、代替えとして未規制物質を含んでいることが多く、そうした未規制物質によってシックハウス症候群が起きているのが現状である。
建材に多用されるようになった未規制物質の例としては、メチルシクロヘキサン、トリメチルベンゼン、アセトン等があげられるが、その他、従来になかった多種多様な未規制物質が近年の建材に使用されている。従って、シックハウス症候群の発生を防ぐには、13物質だけでなく、未規制物質総量の把握と、その低減化に向けた対策が必要と考える」としています。

また、未規制物質で高濃度を示した物質はテルペン系も多く、近年のシックハウス対策として用いられる自然素材の影響も大きいと考えられています。接着剤や有機溶剤を用いるに内装材の代わりに、ヒノキや松等の無垢材や天然塗料等から放散される物質もあり、「規制溶剤の代替」及び「自然建材の多用」もその原因の一つとも考えられ、その使い方にも注意が必要です。

APEC(アジア太平洋経済協力機構)環境技術交流バーチャルセンターは「地球を救おう。未来を救おう」のなかで、特集<子どもの健康と室内空気汚染対策>を組み、やはり“未規制物質による影響”について取り上げています。「最近は代替製品の使用に伴う未規制物質の濃度の増加が報告されており、その健康影響が気がかりである」としています。

国はまだ13物質以外の「未規制物質」への対応を明らかににしてはいませんが、早急な方策が望まれます。また、建材等は使用前に化学物質を放散させる手立てや、使用建材の決定に際しては、その建材(天然素材を含む)に含まれる物質の確認などにも目を向ける事が大切です。


2014年10月30日木曜日

【環境省・VOC環境濃度調査について】

環境省から毎年度行われている「VOC環境濃度調査」の実施内容について公表されています。この調査の目的は<大気汚染防止法>に基づくVOCは排出抑制対策の効果を確認するために行われ、全国56地点で、24時間サンプリングを年4回(春・夏・秋・冬)し、対象物質はH24年度は19物質(トルエン・キシレン・酢酸エチル・デカン・アセトンなど)で、H25年度は58物質が対象となっています。

調査結果が公表されているのはH22年度の内容です。
【VOC排出量の推移】では、国内の固定蒸発発生源からの排出量は平成12年度に比べると44%減少しており、「着実に削減している」としています。
H12年度:142万トン⇒H17年度:111万トン⇒H22年度:79万トン
*国内の移動発生源からの排出量はH17年度:49万トン⇒H22年度:35万トン

【VOC環境濃度の推移】では、H17年度 0.091ppmCがH22年度には0052ppmCと 
 43%減となっており、「VOC排出量だけでなく、実際の環境中のVOC濃度も確実に減少していることが確認できた」としています。

*「ppmC(炭素換算濃度)」とは排出基準値で使われる単位です。通常使われる「ppm」は容量濃度です。単一成分の場合にはppmに炭素数を乗じたものが「ppmC」となります。例えばトルエン(炭素数7)1ppmは、7 ppmCと換算されます。

この調査報告を見る限り、国のVOC排出量は確実に削減され、濃度も減少しており国の大気汚染対策は一定の効果をあげているようです。

ここ数年越境汚染として「PM2.5問題」が大きくなってきました。PM2.5は非常に多くの化学物質が含有されています。調査対象の物質も含まれており、全体の濃度にどのような影響があるか否か新しい発表が待たれます。


2014年10月23日木曜日

平成25年度学校保健統計調査のポイント  「ぜん息」は6歳児がピーク 4.39%

文部科学省は平成263月「平成25年度学校保健統計調査結果」を公表しました。この調査は<学校における幼児、児童及び生徒(以下「児童等」という)の発育及び健康の状態を明らかにすることです。また、昭和42年から継続調査の「ぜん息」についても公表されています。

調査対象は満5歳から17歳までの児童等の一部で約400万人が対象です。
今回調査のポイントは

1.   身長の平均値の推移では平成6年度~13年度あたりをピークに、その後は横ばい傾向。
昭和23年当時と比較すると8歳時男子は117.4cm128.2cm10.8cmの伸び、同じく17歳男では10.1cmの伸びで170.7cmとなっています。

2.   体重の平均値の推移では、平成10年度~18年度あたりをピークに、その後減少傾向。
昭和23年当時と比較すると8歳時男子は22.0kg27.1kg7.1kgの増加、同じく17歳男では11.1kgの増加で62.8kgとなっています。

3.   年間発育量の世代間比較(身長・体重)
男子・女子ともに身長、体重のいずれも、現代に近い世代ほど早期に増加。
身長・体重(男子)の場合、昭和15年度生まれの年間発育量のピークは14-15歳、昭和40年生まれではピークは12-13歳に、平成7年度生まれでは11-12歳となっており早期の増加傾向となっています。

.「ぜん息」
  平成25年度の「ぜん息」の者の割合は、前年度と比すると、中学校では増加し過去最高となっているが、幼稚園、小学校及び高等学校では減少。

昭和42年度より調査していますが、平成25年度の各学校段階では、幼稚園が2.13%(昭和42年度は0.29%)、小学校が4.15%(同0.25%)、中学校が3.22%(同0.08%)、高等学校が1.90%(0.03%)となっております。昭和42年度よりの47年間で各学校段階で数十倍にと飛躍的に増えています。これは大気汚染や室内空気質に大きな原因があると思われます。平成15年のF☆☆☆☆規制以後も平成22年度まで右肩上がりの増加傾向でしたが、幼稚園及び小学校では2年連続、高等学校では3年連続減少の傾向がでています。

年齢別では6歳から14歳の各年齢で3%を超えており、6歳が4.39%と最も高くなっています。6歳以降は年齢が進むにつれて減少しています。

ぜん息は空気の通り道である気道が常に炎症を起こしている病気です。この気道の炎症がアレルギー反応によっておこるものを「アトピー型(アレルギー性)」、それとは違う仕組みでおきるものを「非アトピー型(非アレルギー性)」とよんでいます。
こどものぜん息の約90%、おとなのぜん息の約60%がアトピー型ぜん息といわれ、ぜん息にはアレルギー反応が大きくかかわっていると言えます。

アレルギーには体内や皮膚に触れる空気質が大きく影響しています。まだ免疫力が低いこどもには、良質な空気環境が必要です。住宅の空気質を測定し、化学物質の濃度を知ることや、化学物質が検出されたら減衰方法を講じるなど、こどもを取り巻く空気環境を改善しましょう。