2014年11月29日土曜日

電子タバコは安全? (2)

(独)国民生活センターではH228月に「電子タバコの安全性を考える」を公表しています。

国外ではニコチンを含むカートリッジが販売されていますが、国内ではニコチンが医薬品成分に指定されているため、原則として、国内では流通しているタバコ以外はありません。
同センターではテスト時期に国内で販売されている25銘柄についてテストしました。

テスト結果(要旨)は次のとおりです。
     国内で販売されている25銘柄45味中、11銘柄15味でニコチンが検出された。
     国内で販売されているほぼ全ての銘柄でニコチンを含まない旨の表示が見られたが、一部の銘柄からニコチンが検出された。
     カートリッジ内の液成分表示があったのは25銘柄中11銘柄のみで、表示されているものの中でも表示内容には大きな差があった。
     使用対象年齢に関する表示があったものは25銘柄中16銘柄であった。
     多くの事業者は、未成年者は使用するべきではないと回答しながら、表示以外の対策を講じていなかった。

また、同センターでは消費者へのアドバイスとして
     電子タバコの安全性は根拠が不十分であると考えられるので、安易な使用は避ける。
     禁煙あるいは減煙の効果ははっきりしないと考えられるので、その効果を期待して継続的に使用することは避ける。
     未成年者が安易に使用しないよう保護者等が十分に注意する。
     国外ではニコチンが含まれる電子タバコが販売されているので、購入・使用・譲渡には注意する。

また、行政側に対しては電子タバコの安全性について、薬事法・景品表示法等からの調査・指導や法規制を含む安全対策を講じることを要望しています。

しかし、今日に至るまで電子タバコに対する法整備はされておらず、H266月には政府に対し「電子タバコの規制並びに分類に関する質問主意書」が出されております。

電子タバコについては、その安全性について十分に検証されていないのが実態のようです。

特に未成年者の使用には禁止を含む強い規制が必要と考えます。また、副流煙への影響も懸念されています。速やかな法整備が望まれます。



2014年11月28日金曜日

電子タバコは安全? (1)

全国的な禁煙・分煙の意識の高まりなどから、電子タバコが注目されています。禁煙を望むがタバコをなかなかやめられない人や、タバコの値上がりに悩む人などの愛用が増えています。米投資銀行ゴールドマン・サックスは昨年、今後成長が見込める8つの分野を発表しましたが電子タバコもその一つに入っています。

厚生労働省は1127日に「電子たばこ」の健康影響について、初めて本格的な議論を開始しました。この会議では、ニコチン入りの溶剤を海外から個人輸入している現状や、ニコチンが入っていない電子タバコでも、溶液を加熱して蒸気にする過程で発がん性物質が発生し、健康に悪影響を与える可能性がある事が報告されました。

会議で国立保健医療科学院の専門家が、電子タバコの種類によってはその蒸気の中に「発がん性物質のホルムアルデヒド」が紙巻タバコの煙の10倍以上含まれていると報告しました。

WHO(世界保健機構)は20089月、電子タバコの安全性や効果について疑問を呈し、また「電子タバコを使用しないよう強く勧告する」と警告を発しています。ニコチン以外の成分による健康被害が増加してるからです。

電子タバコはバッテリー、カートリッジ、カートリッジ内部の液体を加熱して霧化する部分(変霧部)で構成されています。このカートリッジに香りや味のついた液体を入れ、蒸気を吸う【ベーブ】と呼ばれるタイプの商品が、国内で若者を中心に急激に広がっています。
日本ではニコチン入りの電子タバコの販売は禁止されていますが、2010年の国民生活センターの調査では、25銘柄中11銘柄の電子タバコからニコチンが検出されました。

電子タバコは未成年者でも吸う事ができます。世界でおよそ8000種類の電子タバコが流通し、WHOは各国に対し電子タバコの未成年者への販売禁止や、公共の建物内の使用禁止などを勧告しています。


電子タバコも普通のタバコ同様に「副流煙」の被害が想定されます。厚労省は「吸っている本人だけでなく、周りの人の健康に影響を及ぼす可能性がある」としています。使用者は周囲に影響を与えていることに充分留意しましょう。



2014年11月26日水曜日

札幌市児童の喘息と自宅暖房器具の排気管等の関連について

北海道大学環境健康科学研究教育センターでは、20148月【札幌市児童の喘息と自宅の暖房器具の排気管および機械換気との関連】について発表しています。

日本や海外で過去20年間で児童喘息の有病率が増えており、様々な疫学研究によって、子どもたちをとりまく室内環境が、喘息発症の大きい要因になっていることがわかってきており、その中でも、固体燃料や生物燃料の暖房による室内空気汚染が児童喘息のリスクになること、また、暖房に排気管を使用すると、児童の喘息は減少することが報告されています。今回の研究は、小学生を対象とし、暖房の燃料・排気管の有無・機械換気の有無と喘息症状の関連を明らかにすることを目的にしたとの事です。

今回の研究は200811月~20092月にかけて、札幌市内公立小学校12校の1-6年生6.393名を対象とし、60.6%の3.874名の回答を分析しました。

喘息症状がある児童は12.8%で、喘息症状のリスクは、電気の暖房器具を使用している場合と比較して、ガスや石油などの暖房器具で排気管(煙突)はあるが機械換気のない場合には1.62倍、排気管はないが機械換気はある場合は1.77倍、排気管も機械換気もない場合は2.23倍高くなったとの事です。

また、これまでに喘息のリスクをあげることで知られているダンプネス(湿気がありじめじめした状態)の有無での調査では、ダンプネスがあってもなくても電気の暖房器具を使用している場合と比較して、排気管がない場合や換気設備のない場合には、喘息リスクをあげることがわかりました。

電気の暖房器具と比較して、ガスや石油の暖房器具を使用した場合に喘息のリスクは高く、
その理由として、燃料を燃焼させることにより放出される二酸化炭素、二酸化硫黄、及び粒子物質(PM)などが喘息症状の要因となっています。
排気管のない暖房器具を使用する場合、または、暖房を使用している時に機械換気をしないことも、児童の喘息に症状に大きな影響があるとの事です。

報告では、「北海道は冬が寒く、住宅の気密性が高いため、喘息予防のためには、電機以外の石油やガスを燃焼させる暖房を使う場合、特に排気管のない家では、十分に換気に注意が必要」と結んでいます。

北海道に限らず、東北や北陸では電気以外のガスや石油を熱源とする事は恒常的です。報告書による、児童喘息へのリスク回避のため排気管の設置や換気に充分気を付けましょう。


2014年11月25日火曜日

居室の断熱改修による睡眠・血圧などの安定化へ

東京都健康長寿医療センターでは、「冬場の住居内の温度管理と健康について」として、これからの時期心配される「ヒートショック」についての予防と対策を発表しています。

その中で「居室の断熱改修による睡眠、アレルギー症状、血圧の改善等」についての調査内容を公表しています。

同センターでは断熱改修の前後における居住環境と、高齢者の健康について調査を実施致しました。東京と埼玉で築20年以上の戸建住宅に住む高齢者(59歳~85歳)を対象に、内窓の設置のほか、壁や床への断熱材取付け、及び、床暖房の設置等の断熱改修を実施。この改修の前後で、室温や血圧の測定、健康に関連するヒアリングなど行い2011年から約1年間をかけてデータをまとめました。

1.      居室の断熱改修は、睡眠やアレルギー症状に良い影響を与える。
鼻や眼のアレルギーに関連する、くしゃみ、鼻づまり、涙目等の7項目について、アンケートを実施したところ、改修後は症状が減った。
睡眠習慣についても同様に「睡眠の質」が改善された。

2.      居室の断熱改修は、血圧の低下や安定化に効果的である可能性を示唆。
断熱改修後に、血圧の安定化を示唆する変化が見られた。
2010年実施の高齢者43人(7786歳)への調査によると、部屋全体が暖まっている「適温」での生活が、血圧の上昇を抑え、安定化に効果的である事が判明した。

3.      居室全体を暖房し室温が高いと活動量や筋力も高い
暖房方式と居室の室温、活動量には関係があり、部屋全体が暖まっている「適温」で生活している高齢者は、活動量が高いという結果に。
こたつやカーペットのみを使っている高齢者の「住宅内で歩行活動以上の活動量」の割合は030%に対し、部屋全体を暖房している高齢者の活動量は050%と、活発な事が分かる。
居室全体を暖房している高齢者の握力は、部分暖房の高齢者より高く、また、膝屈伸
力も大きい。

居室の効果的な断熱改修等について、同センターは比較的やり易い方法を紹介しています。
冬場の居室では、熱の48%が窓から逃げています。また換気を上回る熱が壁から逃げています(換気17%・外壁19%・屋根6%・床10%)。

     窓の断熱方法
・内窓等の設置や窓ガラスを単体ガラスから遮熱複層ガラスへ交換。
・ガラス面に断熱シート、断熱フィルムを貼る。
・暖房時にカーテンやブラインドを閉める、すき間テープ等で窓の隙間をふさぐ。

     床の断熱・暖房方法
・床断熱材工事を行う。
・断熱シートや厚手のカーペットを敷く。
・床暖房を行う。

     壁の断熱方法
・断熱材の設置はいろいろの方法がありますが、壁の内側に断熱パネルを取り付ける方
法は一部屋単位での設置が可能で、比較的手軽な工事で設置できます。
報告書では「これからの寒い季節に備え、簡単な施工で、コスト負担も少ない断熱改修や、こたつやホットカーペットのような局所暖房でない居室全体を暖める床暖房等を取り入れることは、居住者の健康に大変重要です」としています。


公表された内容は従前から良く言われていたことですが、エビデンスを集め実証したこともまた重要な事です。高齢者にとって「暖かい」ということは何にもまして良い環境です。動く事により筋力をつけ、自分で動きまわることが、寝込まないための大切な事です。



2014年11月11日火曜日

「三次喫煙」  乳幼児への影響大!

三次喫煙という言葉をご存じですか、近頃よく耳にする言葉です。三次喫煙は残留受動喫煙(サードハンドスモーク)ともいい、ダナ・ファーバー研究所(アメリカの国立がん研究所)が作りだした新語で、2009年にその存在が認知されました。

喫煙による代表的な健康被害は、タバコを吸った本人が肺内に吸い込んだ煙の中に含まれるニコチンやタールなどの有害物質によって引き起こされる「一次喫煙」。しかし、タバコを吸う人は「フィルター」を介してタバコの煙をとり込むことがほとんどですが、周りにいる人は直接発がん性物質を含んだ煙を吸い込む事となり、リスクが高まります。
タバコを吸う人のまわりに人たちが、タバコの煙を吸い込んでしまう「二次喫煙=受動喫煙」があります。

では、三次喫煙とは何でしょうか。
タバコを消した後の残留物から有害物質を吸入することを言います。受動喫煙に比べると一般の認知は低いといわれています。有害物質を体内に取り込むとは、タバコの煙が壁や家具、カーテンに付着し、その家具などに触った時など手に付着し、発がん性物質が体内に入り込みます。

三次喫煙で問題となる有害物質の中には、発がん性物質として最も強力なものの一つである「ニトロソアミン類」が含まれています。

ダナ・ファーバー研究所は「三次喫煙の影響を一番受けるのは子どもや赤ちゃんなどの乳幼児」といっています。その理由は子どもの呼吸速度が早いこと。大人が1分間に「20回」程度といわれていますが、1~3歳の子どもは「20~40回」、0~1歳の乳児は「2060回」も呼吸をします。また、床やカーペットに接触することが多く、背丈も小さいため大人より三次喫煙のリスクや害は高くなります。

子どもは鼻や気管や肺の粘膜の感受性が高いので、煙の中の微粒子や化学物質で粘膜は傷だらけになりやすく、長期間になればぜん息などの慢性の疾患も起こると言われます。

三次喫煙のリスクは払拭することが難しいといわれています。例えば喫煙者が住んでいた賃貸物件では、喫煙者が引越してから2か月経っても三次喫煙の有害物質は残っています。
三次喫煙の有害物質は除去が難しいため、通常の掃除器具での掃除では完全には除去できません。完全に防ぐには、家具、カーペット、壁紙などすべて新しいものに取り換える事が必要と言われます。


喫煙は受動喫煙(二次喫煙)そして三次喫煙と、喫煙者以外への影響が大きく、喫煙者はその影響を考える必要があります。



2014年11月6日木曜日

木質化率と睡眠効率

「建物全体の50%程度、例えば床と天井にムク材を使用している住宅は、住
まい手が良好な睡眠を得るのに最も効果的」と、慶應大学の伊香賀教授が全国
の工務店及び住まい手の協力を得て検証しまとめられています。

建物の木質化率が低すぎても、高すぎてもだめで50%程度を木質化している
場合が最も睡眠効率が高いとの事です。ムク材の見た目と香りがもたらすリラ
ックス効果の点から、木質化と良好な睡眠の関係を検証。木の香りが強いほど、
好ましさとリラックス度が強まる事が分かりました。さらに、木質化率別に香
りを好ましいと感じる人の割合は、木質化率が高いほど好もしさが上がりまし
た。

ムク材の見た目の効果。床や壁、天井などにムク材を使用している量と、見た
目の好ましさの関係を分析したところ、壁面の係数だけがマイナス、「壁面に
おいて木の使用量が多くなると、見た目の好ましさが低下すると見られる」と
の事です。

また見た目を好ましいと思っている人の割合は、木質化率50%程度をピークに
好ましいと感じる人の割合が変化する傾向が表れ、木質化率100%の方が好まし
いと感じる人の割合が下がると言う事です。これは「室内の全面を木質化する
と、暗い印象や圧迫感が出るのでは」と伊香賀教授は説明しています。

リラックス度と睡眠効率の関係では、互いに高い方が良好で、リラックスでき
る木質化された住宅であれば【良い睡眠】が得られるとの事です。また1部屋
だけでなく「就寝するまでに過ごすリビングやダイニングなどの部屋でのリラ
ックス度も影響する。建物全体で50%程度が望ましい」と指摘しています。

いま「自然素材」・「ムク材」など木を前面に打ち出した仕様・工法が目立ち
ます。また消費者もこの言葉に惹かれ我が家でも是非にと用い、床はもとより、
壁・天井も木質仕上げで、建物に入るとある種圧倒される思いがする家もあり
ます。やはり「ほどほど」の使いみちが、一番安定し、休まる空間といえるの
でしょう。


2014年11月4日火曜日

アジア大陸から飛散 「砂のちり」でぜんそく重症化

中国医科大学第四医院を中心とした研究グループは、日本に飛散する「アジア大陸からの砂のちりによってぜん息が悪化」とした研究結果を1014日に科学誌に報告しました。。

同研究グループは、ネズミを用い、「オボアルブミン(OVA)」と呼ばれる卵の卵白に含まれる物質でアレルギーの状態を起こした場合、砂のちりに存在するタール成分がどう影響するかを検証しました。

福岡県の大気より採取した砂のちりからタール成分を抽出し、さらに、ゴビ砂漠から採取した砂のちりを加熱して無害な状態にし、タールやOVAなどで処理し、ネズミへの影響を調べました。

その結果、無害化した砂のちりとOVAだけであれば、有害性は軽かったが、タール成分が加わった場合、低濃度でも気道でぜん息の原因となる好酸球が大量にでてきて、粘液を作りだす杯細胞を増やすとわかったとの事です。
アレルギーの人はこのようなタール成分が入ったものを吸入したとき、重症化が想定されとのことです。

同じく大陸から飛散するPM2.5は、ぜん息などに悪い影響を与える事が知られてします。これからの時期、黄砂とそれに混じるPM2.5などの大気汚染物質の飛散が高くなります。


外出時PM2.5対応のマスクの着用や、帰宅した時の衣服からの払い落としなどを行うとともに、住宅での外気の取り込みなど注意が必要です。また換気を控えた場合など、室内を<きれいな空気>の環境に保つことが非常に重要となります。