東京都健康安全研究センターは新築住宅25居室の、化学物質69種類の空気中濃度を測定したことがあります。その結果、厚生労働省の設定した13物質の暫定目標値400μg/㎥と比較したところ、13物質のホルムアルデヒドを含む数種類で指針値を超え、指針値のない未規制物質では、α-ピネン、リモネン、メチルシクロヘキセン、トリメチルベンゼン、テキサノール等15物質が単独で400μg/㎥を超え、未規制物質が高濃度になる傾向にあるとしています。
同センターからは<室内環境関連>に関する情報が公表されています。その一つに【未規制物質による室内空気汚染の現状】として、日本臨床環境医学会の会長賞受賞論文が発表されています。(*出展:臨床環境医学(第21巻第1号))
冒頭の要約の中で次のように述べています。
「1990年代に顕在化したシックハウス症候群は大きな社会問題となり、その対策として、厚生労働省はトルエン・ホルムアルデヒド等13の物質について室内の濃度の指針値を設けた。その結果指針値設定物質の室内濃度は低下した。近年使用されている建材には、シックハウス症候群に配慮した健康住宅対応型の製品が多いが、これは13物質を含まないことを意味している場合が多い。しかし、健康住宅対応型であっても、代替えとして未規制物質を含んでいることが多く、そうした未規制物質によってシックハウス症候群が起きているのが現状である。
建材に多用されるようになった未規制物質の例としては、メチルシクロヘキサン、トリメチルベンゼン、アセトン等があげられるが、その他、従来になかった多種多様な未規制物質が近年の建材に使用されている。従って、シックハウス症候群の発生を防ぐには、13物質だけでなく、未規制物質総量の把握と、その低減化に向けた対策が必要と考える」としています。
また、未規制物質で高濃度を示した物質はテルペン系も多く、近年のシックハウス対策として用いられる自然素材の影響も大きいと考えられています。接着剤や有機溶剤を用いるに内装材の代わりに、ヒノキや松等の無垢材や天然塗料等から放散される物質もあり、「規制溶剤の代替」及び「自然建材の多用」もその原因の一つとも考えられ、その使い方にも注意が必要です。
APEC(アジア太平洋経済協力機構)環境技術交流バーチャルセンターは「地球を救おう。未来を救おう」のなかで、特集<子どもの健康と室内空気汚染対策>を組み、やはり“未規制物質による影響”について取り上げています。「最近は代替製品の使用に伴う未規制物質の濃度の増加が報告されており、その健康影響が気がかりである」としています。
国はまだ13物質以外の「未規制物質」への対応を明らかににしてはいませんが、早急な方策が望まれます。また、建材等は使用前に化学物質を放散させる手立てや、使用建材の決定に際しては、その建材(天然素材を含む)に含まれる物質の確認などにも目を向ける事が大切です。
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